Canon 7D 動画撮影日記 其の三 〜画質向上法〜
最近、金欠病というヘタすると不治になりかねない重い病にかかってしまいました。
というわけで、あまり金を使わずにいま持っている装備の潜在能力を可能な限り引き出す方法をいろいろと探しまくってみたところ、非常に面白いアイテムを二つ発見しました。
まず一つめは三次元のアイテム:『Fader ND』
リングを回すことで、2 stop から8 stopまでNDの濃さを調整できるフィルターです。
価格:77mm+各レンズのステップアップリング $100〜
こんな感じのフィルターです:
浅い被写界深度こそDSLR動画の醍醐味。(クオリティーだけなら同額のビデオカメラのほうが断然高い)場所や状況によってNDの濃さを自由に変えられるFader NDは動画師(?)にとっては非常に便利なアイテムです。撮影中いちいちフィルターを変えなくていいわけですからね。得に自主映画なんか作ってるような人は不可欠といっても過言ではないかも。
次は、二次元のアイテム:『Neat Video』$100
ISOノイズをぼほ完全に除去してくれる魔法のようなソフト。7DはISO1250以上を超えると砂嵐が発生します。こうなった映像は使い物にならない場合が殆どなのですが、Neat Videoさえあれば6400で撮影しても大丈夫だったりします。すげー。
『1600以上のISOを開放してくれるソフト』という解釈をすれば、$100も安く感じるかも(?)。
また、高いISO以外でも、カラーコレクションする時に非常に役にヤツデンジャラスなソフトなので、あって損することは絶対にありません。今回はこのNeat Videoのほうを重点的に紹介してみます。
//砂嵐
まずは7D動画のISOのノイズ状況を視覚化したチャートをご覧ください。レンズキャップをつけたまま真っ暗闇を撮影し、FCPでガンマレベルをマックスにしたものです:
ご覧の通り、1250あたりから一段とノイズが酷くなるのが一目でわかります。もちろんこれはわざとノイズを強調しているものなので、実際カメラから出てくる映像がここまで凄いことなってることはないはずですが、カラーコレクションを考えてるなら話は別。ちょっとでもガンマレベルを押したりコントラストを強めたり、エフェクトを重ねたりすると、あっという間にボロが出てしまうので、やっぱりせいぜい1250~1600あたりの映像が限度になってしまう。
そこで登場するのがNeat Video。ノイズリダクションのソフトは星の数ほどありますが、Neat Videoはその中でも五本の指に入る性能を誇っています。(ぶっちゃけ自分は三つくらいした試したことはありませんが)実際サンプルを見たほうがわかりやすいのでいくつか用意してみました。用途別に三つのクリップを使っています。
*Vimeo側で圧縮されているので、元のままのクオリティーを見たい方は右下の Download this videoからダウンロードしてください。アップロードするのに10Mbpsのh.264に圧縮していますが、画質はほぼ維持されていると思います。ちなみにもとの動画は128MBあります。また、このブログのレイアウトだと動画サイズがすんげく小さくなっちゃうみたいなので、ロードしたらフルスクリーンにするか、http://vimeo.com/11292190 からVimeoのサイトのほうへいってください。
**【一時間後更新】やっぱVimeoに上がると圧縮されまくってて違いがあんまり見れないみたいです。なので自分のDropboxのPublicフォルダーに元の動画を上げておきました。ダウンロードしたい方はこちらのリンクからどうぞ。ウイルスとか心配されるのもアレなので、Zipせずに素のままで上げてます:灰色莓 7D Neat Video テスト.mov【/更新終わり】
【更新2】アホだおれは……。1080Pの設定にチェックしてなかっただけだったです。orz でもこれで元の動画との差が大幅に縮まりました。一応オリジナルを見たい方のために、上のDropboxのリンクは生かしておきますが、Vimeoでのフルスクリーンもなかなかいい感じです。【/更新終わり】
用途1 レスキュー使用 〜とあるバーでビリヤードをしている女の子〜
絞りはF2.8でISOはたしか3200だったと思います。光が当たっている場所は当然ノイズフリーですが、壁等には極彩色の砂嵐が……。これはちょっと使えね〜……みたいなクリップを使えるレベルに直す使用法です。ディフォルトの設定でもこれだけの違いがあるので、じっくりいじったらもっと綺麗になるはず。まあ……厳密にはできるだけこういうクオリティーの映像を撮らないように努力するのが正しい姿勢ですが、ピンチの時には頼もしいことこの上ありません。
用途2 ネコ使用 〜ネコのDoh君〜
猫だから。……じゃ理由にならないのでとって付けた薀蓄:背景の枕を見ると歴然とした違いがあります。うん。デフォ設定のせいか、紺色のズボンのあたりがややもやけ気味っぽいです。
用途3 練磨使用 〜とあるイベントでのゲリラインタビュー〜
すでにいい感じの動画をさらによくする使用法。これが今回の目玉。絞りはF1.8、ISOはノイズの最も少ない160で撮った映像です。すでにノイズが殆どないのにノイズリダクションする必要があるのか?と思うのが普通ですが、このクリップをカラーコレクションしている際、とても興味深いことを発見しました。それは、どんなにいい感じに撮れた映像も、カラーコレクションする前は、必ず軽くディノイズしたほうがいい、ということ。Post過程(編集の過程)に重点を置いたワークフローをしている場合や、このインタビューのクリップみたいに被写界深度が浅い場合は得にそう。
Postの過程を重視した撮影法。ようするに前回紹介したニュートラルのプロフィールのことですが、あの設定がまさにここで本領を発揮します。このフラットなプロフィールは修復不可能である映像のエイリアスを回避するために、シャープネスを0まで落としてあるため、編集の過程でシャープンすることが前提となっています。なのでカラーコレクション後、最後のステップとしてUnsharp Maskやシャープンを使用するのですが、この際映像に少しでもノイズがあるとそのノイズもシャープンの対象になってしまうため、どうしても控えめに設定しなくてはなりません。しかし、Neat Videoでノイズを除去すると、普段よりより一層シャープネスを強めることができ、結果が大きな差が出てきます。
最初のビリヤードの女の子とDohの隣合わせの映像を見ると、シャープネス設定がノイズによってやられてしまっているのがよくわかると思います。
それぞれの動画をクロースアップしてノイズの状況を見やすくした写真のシーケンスを作ろうかと思いましたが……気づいたら動画作るのと記事書くのに四時間以上かかってるので、続きはまた明日。か明後日。か時間がある時……
続きが気になる方はできればコメントして教えてください。誰も読まない記事にあまり力を入れたくないので(横着でソミマセンw
はじめまして
動画撮影日記をとても楽しく読ませてもらっています。
かつ勉強させてもらっています。
自分は今EOS X4を購入しようと思っています。目的は主にCGとの実写合成をしたいと思っております。写真もとります。
日記を見る限りレンズはtamronが良さそうですね(コストを考えて)。
けど、初めての一眼レフなので、写真撮影をかねて多少ズームできるレンズがほしいです。
過去には考えられないでしょうが、全部でコストは10万くらいに抑えたいので混迷しております。
ある程度オールマイティなレンズのお勧めがあれば教えてください。
スー
2010年 4月 28日 at 5:58 pm
こんにちはスーさん、はじめまして。
こんな月一くらいしか更新しない日記を読んで頂いているとは幸いに思います。
ズーム的にレンジの幅が広いレンズでパッと思いつくのは……
Canon 18mm-135mm F3.8~F5.6
http://www.amazon.com/Canon-18-135mm-3-5-5-6-Standard-Digital/dp/B002NEGTT2/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=electronics&qid=1272509563&sr=8-1
Sigma Canon 18-135 F3.8~F5.6
http://www.amazon.com/Sigma-18-125mm-3-8-5-6-Digital-Cameras/dp/B001546MNE/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=electronics&qid=1272509507&sr=1-1
こんなところでしょうか。ただし、双方ともズームする際絞りが変化する上、一番明るい状態でもF3.5とやや暗めなので、残念ながら動画用としては個人的にはあまりお勧めできません。
ちなみに、実写合成というと、グリーンスクリーン/クロマキー撮影のような感じのものでしょうか?撮影環境(照明具合等)を多少なりにコントロールできるのなら、以上のレンズでもOKかもしれません。照明を整えることさえできれば、ISOによるノイズという大きな問題を解決できるので、暗めのレンズでも十分使えるはずです。……が、そうなると=”暗いところでも撮影可能”+”普通のビデオカメラでは得られない浅い被写界深度”というデジイチの最大の長所である二つの利点を殺すことになるので、あまり意味がないようにも思えます。
動画と写真、どっちのほうに力を入れるおつもりでしょうか? どっちを選ぶかでレンズの揃え方も変わってくるので、宜しければ教えてください。うわ……すみません……主に動画用って書いてありましたね。orz いやー恥ずかしいです……。
その場合、やっぱり自分のお勧めは17mm-50mm F2.8か(Tamronの他にもTokinaとSigmaもに似たようなものを作ってます)、24mm-70mm F2.8になると思います。
24-70 F2.8 のSigma:
http://www.amazon.com/Sigma-24-70mm-Aspherical-Aperture-Standard/dp/B0009E1XF8/ref=sr_1_24?ie=UTF8&s=electronics&qid=1272509334&sr=8-24
動画と写真は似て非なるものなので、カメラ店/サイトのユーザーレビュー等がまったく参考にならない場合が多々あります……。写真用としてはちょっとクオリティーに難があるレンズでも、動画の為に使うなら全然オッケーなんてのも珍しくないので、色々なレンズをレンタルしたりして自分にあったものを探すのもいいかもしれません。
……うーん……なんかうやむやな返答になってしまいましたね……申し訳ありません。 他に何か質問がありましたらいつでも気軽にどうぞ。
munisix
2010年 4月 28日 at 8:39 pm
丁寧なお答えありがとうございます。
購入目的は7:3ぐらいで動画を撮りたいと思っております。
実写合成は、背景を撮影するのが主になります。実写素材に部分的にCGで作成した物やキャラを合成する感じです。後々グリーンバックの撮影も視野に入れたいです。
デジイチは明るいレンズが使えることが最大の長所なのですね。。。
F2.8とF3.8では結構変わってくることについても、これらは実経験をしないとまったく想像の範囲外ですね><
又、紹介してくださいましたCanon 18mm-135mm F3.8~F5.6では明るさが変わることについてなのですが、絞りを固定したりできないのでしょうか?浅はかな質問で申し訳ないです
後、照明を調べてみたのですが結構なお値段するのですね。。。
びっくりです。やはりここは明るいレンズでしょうかねー。。
スー
2010年 4月 28日 at 10:03 pm
すみません……寝不足で目を開けてられないので、返信は明日になっちゃいそうです。ちゃんとお答えしたいのでそれまで待って頂ければ幸いです。
munisix
2010年 4月 29日 at 12:46 am
追記
F2.8に絞ってレンズを探してみました。
こちらはどうでしょうか?
TAMRON
SP AF 28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A09) (キヤノン用)
スー
2010年 4月 28日 at 10:46 pm
返信遅れて申し訳ありません。
18-135 F3.5~F5.6のレンズの件について:
すみません、絞りを固定するという意味がちょっとわかりません……orz
見当違いな返答でしたら申し訳ないのですが、このレンズのようにF数値が二つ表記されているズームレンズは、X(この場合18mm)からY(135mm)までの距離にかけて、絞りの全開状態がF3.5から5.6へと変わるということを意味しているので、135mmの状態で絞りをF3.5まで開くことはできません(135の場合、最も明るい状態(絞り全開の状態)はF5.6となります)。
動画の場合、シーン同士の露出具合に連続性が求められるケースの多いので、こういうレンズはあまりオススメ出来ません。(編集の過程で統一させることも出来ますが、手間であるうえ、シーン同士をまったく同じようにするのは結構難しいです)
18mmの状態からF5.6で撮影すればズームによる露出具合が変わることはないですが……F5.6コンスタントな動画撮影はいろんな意味で素っ気ないものになると思います。暗いし、被写界深度は深いし、あまりいいことがありません。
Tamronの28-75mmの件について:
自分は使ったことがないのでなんとも言えないのですが、少なくても動画用としては上の18-135よりはいい買いだと思います。自分の場合、X4や7D等のクロップセンサーカメラで使うには28mmは窮屈に感じたため、17-50をディフォ用レンズとして買いました。
ちなみに、背景撮影と聞くと『広角のレンズで撮影された幅広い景色』みたいな感じのシーンを想像するのですが、そういう感じの風景を動画で撮影するおつもりですか?
もしそうでしたら、デジイチよりも同額のビデオカメラを買うことを強くお勧めします……。
munisix
2010年 5月 1日 at 1:50 am
お忙しい中、返答ありがとうございます
18-135 F3.5~F5.6のレンズの件について:
F値の設定がマニュアルで(マニュアル露出)できるものだと思い、絞りを固定することができるのではと思ってしまいました。。これとはまったく別物だと考えてよいのでしょうか?
また自動露出設定でも明るさが変わってしまうのでしょうか?
すみません内部的な話になっていしまいまして><
Tamronの28-75mmの件について:
なるほどクロップセンサーという機能のことをはじめて知りました。
7倍できるのは良いですね。
17-50をディフォ用レンズのほうに気持ちが傾きました。
背景撮影は主に室内になると思います。
確かに幅広い景色だと一眼動画の長所を消してしまうから意味ないですよね。。
撮影といってもまだ完全に内容が決まったわけではないですので、トータル的に見ればx4かなと思っております。
すみません、この辺はっきりすれば話は進みやすいと思うのですが、どうかよろしくお願いします
スー
2010年 5月 1日 at 5:18 am
そういう意味ではF数値は手動で設定できますし、自動露出(厳密には自動ISO設定ですが)も出来ます。
ただし室内等のような暗い場所で撮影する場合、十中八九レンズを全開まで開放することになると思います。
レンズが全開に開かれた状態で録画中にズームをすると、以下のようなことが起きます:
オートISOの場合:
18mm F3.5で撮影している→ズームする→35mm辺りでF4.0に切り替わる→切り替わる時に映像が一瞬だけ暗くなる→暗くなった分を補うためにカメラがISO数値を上げる
18mmから135mmまでズームした場合、F4.0、F4.5、F5.0、F5.6と、4回この現象が起こることになります。
絞りが切り替わる際、0.5秒くらいで均一された露出具合に戻りますが、カクカクと突然暗くなるので、かなり目立ちます。
また、ISO数値は上げれば上がるほどノイズが増えるので、映像のクオリティーがどんどん劣化していくのがハッキリと録画されてしまいます。
『画質が多少悪い』くらいならまだ修正の余地がありますが、『映像全体が常に不均等』な動画を直すとなると(不可能ではないにしろ)物凄い手間がかかるので、こういう映像を撮ること自体極力避けたほうがいいと思います。
見たほうが早いと思うので:
(Sigma F4-6.3を使用したズームテストらしいです。29秒あたりからカクカクと露出具合が変化しているのがよく見えます)
自分もはじめは7Dに付いてきた28~135mm F3.5〜F5.6を、ズームしなければ使えるかも……と思って一生懸命いろんなことを試してみましたが、結局諦めて売ってしまいました。
一番明るい状態がF3.5なレンズをディフォ用として使うのはかなり厳しいです……(笑)それに被写界深度があまり浅くなってくれないので、使っていてあまり面白くありません(←超個人的な偏見)
日常用のカメラとして使うのならこんなの問題の内にも入らないのでしょうが、プロダクション用として使うのなら間違いなく致命的な要素なのでお気をつけください。
munisix
2010年 5月 1日 at 11:22 pm
返答&動画添付ありがとうございます。
動画確認したところカクカクしていますね。これは使えないです。
反対に自動露出にしない場合(iso固定)は、カクカクしない代わりに暗くなっていくということなのですね。
つまりズームレンズの場合、カメラボディ内で露出変更して明るさ調整をするか、レンズ内で明るさを調整するかということになりますね。
動画レンズと静止画レンズの使い分けはこういうところからくるのですね。とても勉強になりました。
17mm-50mm F2.8でいきたいと思います。
ありがとうございました
これからもよろしくお願いします
次のレビュー楽しみにしています
スー
2010年 5月 2日 at 12:26 am